212人が本棚に入れています
本棚に追加
見え見えの見栄。
チャイムの音が響く中、俺たちは教室に入った。
「全然間に合ったな!」
翔太がロッカーにボストンバッグを投げ入れながら、こっちを見た。
俺は頷き、席に着こうとしていた。
「正夫!」
振り向くと、担任の吉田が何かを手にして近づいてきた。
俺はその何かを見慣れすぎて、もうそれが何かを知っている。
黄色い封筒。
──あれは。
俺はその封筒を、当たり前のモノを受け取る自然な感じで机にしまった。
「お前んち、学費毎回引き落とせないのか?」
前髪をふざけたゴムで結んだ奴が言った。
野田だ。
クラス1のお調子者で家が金持ちな奴だ。
俺は答えた。
「今回さ、あのゲームでただろ?ハンターの最新版!あれ、我慢出来なくてさ。学費くすねて買っちまったんだ」
俺は笑いながら、そしてどこか余裕のあるふざけを見せるような仕草で、野田にそう言った。
野田は天井を一瞬見て、それから仲良くしている笹野と目を合わせてから俺に言った。
「ほー。それは羨ましいわ!貸せよ。すぐ返すからさ」
「うん、いいよ。今、翔太に貸してるんだ。来週な!」
「おう!ありがと。楽しみだわ」
最初のコメントを投稿しよう!