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俺は笑いが余ったまま席について黒板を見てた。
翔太がこっちを見ているのは知っていた。
おい、そんな不安そうな顔すんなよ……お前のその顔、好きじゃないんだ。
お金が無いわけじゃないんだ、惨めでもないんだ。
俺が悪いんだ、家族が惨めな訳じゃないんだ。
翔太、そう見えないか?
その日の授業は、淡々と過ぎていったように感じた。
今日は翔太と帰りたくない、保健室にでも寄ろうかな。
そんな事を考えていた。
廊下の白線を見ながら歩いていると、後ろから大きい声が飛んできた。
「正夫~!あのゲームの攻略の話しなんだけどさ!とりあえず……一緒に帰ろーぜ!」
振り向くと翔太。
その数メートル後ろに、野田と笹野が見えた。
野田と笹野は別にこっちを見ていなかった。
俺は翔太を通り越すような声で、「りょーかい!」とだけ答えた。翔太は笑ってた。
後ろを振り返って、またこっちを見て──
また、笑った。
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