浄土の山里

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「もしもし?」 やはりこちらから切り出さざるを得なかった。 おずおずと向こう側も声を出した。 「俺だよ」 深く溜め息を吐き出すような信夫の声が、数週間ぶりに身体中に響き渡った。 しばらくの間、二人とも無言状態になった。 二人の心の壁が冷たく立ちはだかっているかのような空々しい沈黙が流れた。
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