浄土の山里

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夕間暮れの中へ、憔悴した身体を投げ出す。 重い足取りで、まばゆいアーケードが連なる京都の四条通りを歩く。 今日、私の肩並びに、信夫は居ない。 否、今日のみならず、ここ数週間居なかった。 ふと、そんな、どうでもいいことを頭にちらつかせながら、もたつく人々の垣根の合間を、追い抜き、追い越し歩く。 夜でも光の洪水は、人々の顔を明るく照らし出し、また、刹那的な快楽をも浮き彫りにする。
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