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お母様へ
お母様が亡くなられてから随分と時が経ちました。
人間はしばしば死者にも手紙を出すという風習があるそうなのですが、それに倣ってまたお母様に書いてみたいと思います。
件の人間を逃がしてから、私は頑張って人間の事を勉強しました。何を食べるのか、どんな風に生活するのか、どうやって増えるのか、どこが急所なのか、どんな環境で弱るのか……たくさん勉強をして、やっと人間を飼う事が出来るようになりました。
そうそう、近隣の町を襲った時に、あの時の女の子を見つけて、また飼うことが出来ました。最初は嫌がっていましたが勉強して得た知識を活用することで、彼女は最後まで喜んで私に飼われていました。やはり人間の事を理解しておけば、ちゃんと懐いてくれるのですね。
子どものころは想像もつきませんでしたが、人間は愛でても良いし、食べても良いという非常に優れた生き物なのですね。お母様との手紙のやり取りが無ければ、とても興味を持つことなどできなかったでしょう。
近々、集団での飼育を試してみようと思っています。もしこれが可能になれば、食糧事情は大きく変化して、私達一族の繁栄はより確かなものになると思います。
私の中から、あの女の子も祈ってくれていると思います。お母様も私達一族に力を与えてください。
エイラより
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