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しゅどうけん
「膝枕をしてみたい」
私がそう言うと玲奈っちは眼鏡をクイッと上げて、教科書から目を離した。
「なんで突然」
自分の家なのに、なぜか制服から着替えない彼女の口振りは真面目そのもので、ちょっと怖い。でもこのまま押していけば優しい彼女の一面が現れることを私は知っている。
「昨日ドラマで見て、いいなーって思った」
それは大河ドラマだった。売り出し中のちょんまげの俳優さんが、私の知らない女優さんに膝枕をしてもらっていて、何かときめくものがあった。「いいなー」と思ったのだ。
「テスト勉強は?」
「ちょっと休憩」
「赤点取ったらお小遣い減らされるんでしょ? USJ行けなくなっちゃうよ」
「それはそれ。これはこれ」
「はあ」と玲奈っちが溜め息を吐くと、もう一息のサイン。玲奈っちは真面目だけど、実は押しに弱い。主導権を取るにはとにかく押していくのだ。
「ねえ、お願い。してくれたら勉強頑張るからさ」
「……わかった」
いよっしゃアと心の中でガッツポーズ。ちょろいもんだぜという笑いを抑え込んで、れなっちの隣へ。
「私はどうしたらいいのかな」
「うーんとね、正座で!」
「はいはい」
玲奈っちの太腿にいざダイブ! ……というにはちょっと遠慮がある。スカート越しとは言えど、結構デリケートなところだ。恐る恐る、大事な壺でも置くみたいにゆっくりと太腿に頭を付けた。
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