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彼の記憶の中に俺との時間が少しでもあれば十分嬉しいのに、そこまで覚えていてくれるとは……本当に嬉しい。
「ねぇ、まーちゃんは何でここにいるの?」
「…あ、えっと、それは…」
「清水君には、家政婦のバイトをしてもらおうと思ってるんだ。」
「え?!まーちゃん、毎日ここに来るの?!あの気持ち悪いおばさん達はもう来ないの?」
「あぁ、もう来ない。毎日は難しいけれど、これからは清水君が来てくれるよ。」
「えっ?!………里見さん!俺まだやるって言って……」
俺が抗議をしようと里見さんの方を向くと、何故か里見さんは啓太君を指差していた。
指差す方に目を向けると、雰囲気の違いを察知したのか、啓太君があの時と同じ様に目をウルウルさせて子犬の様にこちらを見つめていた。
(………この人、確信犯だ……俺が断れないってわかっててこの時間にここに来る様に仕向けたな………)
もう一度里見さんの方に顔を向けると、『ふふっ、これは断れないだろう』とでもいいそうな顔で微笑んでいた。
「………わかりました…バイト、やります……」
「うん、そうしてくれると助かるよ。」
「やったぁ!まーちゃんがうちに来るー!」
こうして、俺は里見さんに嵌められる様な形でバイトをすることになったのだった
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