1

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
しとしと、ぴちゃぴちゃ。 みんなわたしを見つけては、ゆびをさして楽しそうに見てくれた。 わたしは止まることができないのだ。つかまることができないのだ。わたしは、さみしかった。 そんなある日、いつも追いかけてきてくれるちいさな子どもが、腰のまがりかけたおばあちゃんと手をつないで、わたしをうれしそうに見つめていた。 気をひくように、きらきらと日の光を浴びて輝くように踊った。 彼はいつものようにわたしに気づき、ゆびをさしてわらう。 「おばあちゃん、見て!ほら、いつもあれ、きらきらしてるの!」 うれしそうにはしゃぐ彼を見て、わたしもついうれしくなって駆けていく。 おばあちゃんもわたしをみて、にこやかに笑うと彼のあたまをなでた。 「ほんとうだね」 「ねぇおばあちゃん!いつもどんだけ追いかけても、あれ逃げてっちゃうんだ」 「そうだろうね。あれは“逃げ水”っていうんだ」 おばあちゃんのことばに、わたしは駆ける足をぴたりと止めた。 「あの水たまりはどれだけ追いかけても追い付けないでしょう?あれはあそこにあるように見えて本当はいないんだよ」 ほんとうは、いない? わたしは、ここに確かにいるのに。 彼もわたしと同じかおをして、唇をとがらせた。 「いないなんてうそだよ!だってあそこにあるじゃん!」 彼はそういうと、おばあちゃんから手をはなしてわたしにむかって走ってきた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!