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しとしと、ぴちゃぴちゃ。
みんなわたしを見つけては、ゆびをさして楽しそうに見てくれた。
わたしは止まることができないのだ。つかまることができないのだ。わたしは、さみしかった。
そんなある日、いつも追いかけてきてくれるちいさな子どもが、腰のまがりかけたおばあちゃんと手をつないで、わたしをうれしそうに見つめていた。
気をひくように、きらきらと日の光を浴びて輝くように踊った。
彼はいつものようにわたしに気づき、ゆびをさしてわらう。
「おばあちゃん、見て!ほら、いつもあれ、きらきらしてるの!」
うれしそうにはしゃぐ彼を見て、わたしもついうれしくなって駆けていく。
おばあちゃんもわたしをみて、にこやかに笑うと彼のあたまをなでた。
「ほんとうだね」
「ねぇおばあちゃん!いつもどんだけ追いかけても、あれ逃げてっちゃうんだ」
「そうだろうね。あれは“逃げ水”っていうんだ」
おばあちゃんのことばに、わたしは駆ける足をぴたりと止めた。
「あの水たまりはどれだけ追いかけても追い付けないでしょう?あれはあそこにあるように見えて本当はいないんだよ」
ほんとうは、いない?
わたしは、ここに確かにいるのに。
彼もわたしと同じかおをして、唇をとがらせた。
「いないなんてうそだよ!だってあそこにあるじゃん!」
彼はそういうと、おばあちゃんから手をはなしてわたしにむかって走ってきた。
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