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それと同時に、ぴしゃん、と、突然わたしに、いつも滴っているみずとはちがう液体がふりかかるのがわかった。
うしろをふりかえると、なぜかトラックが道路をふさいでいて、彼の姿はすっかりきえていた。
どこに、きえたの?
きょろきょろと辺りを見渡すけれど、彼の姿はどこにもみえない。
おばあちゃんは半狂乱になりながら、トラックのまえにこびりついた、真っ赤なかたまりにしがみついて泣いている。
ころり、と近くにころがってきたものをみる。
きいろいお花型のそれは、おばあちゃんが必死にさけぶなまえが記されていた。
ああ、あの赤いかたまりが、彼なのか。
それにきづき、じぶんにとびこんできたあかい液体をじっと見つめる。
彼の、追いかけてくれるときの顔と、おなじ色。
やっと、追いついてくれたね。
わたしは泣き叫ぶおばあちゃんからくるりと踵をかえし、いつものように道路を駆けていった。
わたしは“にげみず”。きょうもどこともわからない道路で、楽しくだれかにおいかけられている。
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