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外界から遮断されて、はや数週間。私の日時の感覚はすでに狂い始めていた。
『今日から記録を取ることにしました。』
誰もいない中、ビデオカメラに向かって話を続ける。
SNS全盛期ならともすれば世界中に伝播していったであろう独り言。
しかし今は、誰にもそれが伝わらない。
『もし、私が生きてここからでられなかった場合……』
セリフの合間にシェルター内を軽く見回す。さして広くない空間には、詰め込まれた食料に、暇つぶしの為の書籍が立ち並ぶ。
『これを発見したあなたの心に、私の存在が残ってくれれば幸いです。』
たどたどしくもここまでしゃべって、録画を停止する。
映像を確認しようと再生画面を見た私は驚愕した。
「録画時間……42秒ぉ?」
密室で私は思わず声を上げた。
けっこうな時間話したと思っていたが、それはまやかしだった。
……毎日10分はつらい……。
かつて、一世を風靡したYoutuberらは、10分尺の動画を日々公開していたという。
ましてや撮影となると数時間もかかるというではないか。
しかし、私には到底叶わぬ事だった。
……3分にしよう。
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