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手元の時計を見ながら、3分の動画を撮影する。
よくよく考えれば、無理に喋る必要もない。
気持ちが軽くなった私は、地上での最後の晩餐を思い出す。
『地上で食べた最後のご飯を言います。
白米のご飯……、納豆…、昼の残りの餃子…、えーっと、味噌汁。白味噌の京風のヤツで油あけと小松菜。まだなんかあったな…。あ、なめ茸だ。』
気づけばあっという間に3分が経っていた。
時間を使い切ろうとすると長いが、なにかをやりきろうとすると短いもんだと、私はコツのようなものを得て浮かれた。
撮影を終えた私はソリッドステートドライブの使用量を確認する。
【使用済み:0.02%】
ーー行ける。これなら10年分以上撮れるぞ。
勝利を確信した私は小さくガッツポーズをとった。
自身の記録を付け始めた私は、体力を温存すべく横になって目を閉じた。
……明日は何を撮ろうか。
滅亡した世界の下、
個人用シェルターで一人救出を待つ私に、小さな楽しみが生まれた。
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