1.真っ白なキャンバス

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薄暗い階段を登ると、屋上へと続く重い扉が現れる。 そこには『立ち入り禁止』の張り紙。 だけど 何故か扉には鍵がかかっていない。 そのことに気がついたのは今から半年くらい前のこと。 それ以来、ここは俺の秘密基地になったんだ。 学校の中で唯一心が休まる場所。 誰も知らない俺だけの場所。 そう思ってた。 今日、この瞬間までは。 いつものようにスケッチブックを膝に乗せて座り、空を見上げた。 5月の青空とポカポカとした陽気に眠気が襲ってくる。 たぶん時間にすると数分足らずのうたた寝。 俺は背後に気配を感じて目を覚ました。 「あれ?先客~?」 「…!」 その声に俺は慌てて顔を上げた。 「こんな所で何してんの?」 振り返るとそこには1人の女が立っていた。 その女は不機嫌そうに俺の顔を見下ろしている。 髪は明るめの茶髪。 服装はド派手な赤いTシャツにスリムジーンズ。 …どう見ても生徒ではなさそう。 かといって教師や職員にも見えなかった。 「鍵開いてたんでつい」 俺は慌てて立ち上がって制服のズボンのホコリを払った。 「すみませんでした」 面倒なことになるのが嫌で、そそくさと扉の方へ向かう。 「別に出て行かなくてもいいじゃん」
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