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薄暗い階段を登ると、屋上へと続く重い扉が現れる。
そこには『立ち入り禁止』の張り紙。
だけど 何故か扉には鍵がかかっていない。
そのことに気がついたのは今から半年くらい前のこと。
それ以来、ここは俺の秘密基地になったんだ。
学校の中で唯一心が休まる場所。
誰も知らない俺だけの場所。
そう思ってた。
今日、この瞬間までは。
いつものようにスケッチブックを膝に乗せて座り、空を見上げた。
5月の青空とポカポカとした陽気に眠気が襲ってくる。
たぶん時間にすると数分足らずのうたた寝。
俺は背後に気配を感じて目を覚ました。
「あれ?先客~?」
「…!」
その声に俺は慌てて顔を上げた。
「こんな所で何してんの?」
振り返るとそこには1人の女が立っていた。
その女は不機嫌そうに俺の顔を見下ろしている。
髪は明るめの茶髪。
服装はド派手な赤いTシャツにスリムジーンズ。
…どう見ても生徒ではなさそう。
かといって教師や職員にも見えなかった。
「鍵開いてたんでつい」
俺は慌てて立ち上がって制服のズボンのホコリを払った。
「すみませんでした」
面倒なことになるのが嫌で、そそくさと扉の方へ向かう。
「別に出て行かなくてもいいじゃん」
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