1.真っ白なキャンバス

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「海斗かぁ。かっこいい名前!見た目とギャップありすぎ~」 「…」 「嘘だよ。怒った?」 「別に」 綾乃ははっきり言って俺が一番苦手なタイプの人間だ。 ぶりっ子っぽい喋り方、仕草。 そして、何よりも人のテリトリーにズカズカと入ってくる感じが嫌い。 「嘘だからね。前も言ったでしょ? 海斗、眼鏡外すと結構カッコいいって」 「…」 綾乃の言葉を無視して、再び扉のほうに歩き出す。 「海斗ってさー、友達いないでしょ?」 「え?」 俺は綾乃の言葉に振り返つた。 「当たり?だって無口で無愛想だしぃ、人間嫌いって感じ」 「…」 「あ、また怒った?」 ちょっとムッとしたものの、当たっているだけに何も言えない。 …そうだよ。 俺には友達なんて1人もいない。 そんなん面倒なだけだし。 だけど 今までの人生の中で、そういう存在は1人だけいたんだ。 『キョウヘイ』っていう友達がさ。 俺はふと昔の記憶を思い返したー。 あれは小学校4年生の夏休み。 俺は1歳年上の少年『キョウヘイ』と出会った。 彼はこの街の住人ではなく、夏休みを利用して祖父母の家に来ていた。 俺と同じように物静かで、友達もいなさそうな奴。 ネガティブで行動力がなくて、おまけにすぐに泣く。 つまりは”パッとしない少年”だった。
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