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「海斗かぁ。かっこいい名前!見た目とギャップありすぎ~」
「…」
「嘘だよ。怒った?」
「別に」
綾乃ははっきり言って俺が一番苦手なタイプの人間だ。
ぶりっ子っぽい喋り方、仕草。
そして、何よりも人のテリトリーにズカズカと入ってくる感じが嫌い。
「嘘だからね。前も言ったでしょ? 海斗、眼鏡外すと結構カッコいいって」
「…」
綾乃の言葉を無視して、再び扉のほうに歩き出す。
「海斗ってさー、友達いないでしょ?」
「え?」
俺は綾乃の言葉に振り返つた。
「当たり?だって無口で無愛想だしぃ、人間嫌いって感じ」
「…」
「あ、また怒った?」
ちょっとムッとしたものの、当たっているだけに何も言えない。
…そうだよ。
俺には友達なんて1人もいない。
そんなん面倒なだけだし。
だけど
今までの人生の中で、そういう存在は1人だけいたんだ。
『キョウヘイ』っていう友達がさ。
俺はふと昔の記憶を思い返したー。
あれは小学校4年生の夏休み。
俺は1歳年上の少年『キョウヘイ』と出会った。
彼はこの街の住人ではなく、夏休みを利用して祖父母の家に来ていた。
俺と同じように物静かで、友達もいなさそうな奴。
ネガティブで行動力がなくて、おまけにすぐに泣く。
つまりは”パッとしない少年”だった。
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