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まるで自分の分身のような彼に、俺は無性にイライラして。
俺は生まれて初めて人を怒鳴ったんだ。
『男のクセにめそめそ泣くなよ!』って。
それは自分への言葉でもあったんだけど…。
それから俺たちは、残りの夏休みを毎日2人で過ごすことになった。
海へ行ったり、花火をしたり、冒険をしたりー。
本当に毎日が楽しかった。
毎日が宝物だった。
あんなに笑うことは多分もうないと思う。
それは俺の中にある唯一の"友達"との思い出。
ひと夏の大切な思い出なんだ。
それ以来、キョウヘイとは会うことは二度となかったけどー。
「まあ綾乃も人間嫌いだけどね!」
「…」
「本当に信用できるの、世界に1人だけだもん」
「?」
1人だけって?
俺はその1人すらいないんだよ。
「何だか似てるね。綾乃と海斗」
「…そう?」
1人上機嫌な綾乃を横目に、俺はスケッチブックを閉じる。
やっぱり苦手だ、この子。
どこが似てる?
俺とは全く違う世界にいるような人間じゃないか。
自信満々で、自分大好き人間。
綾乃は色んな人に愛されて生きてきた顔をしてる。
確かに学校では誰ともつるまない"一匹狼"かもしれない。
だけど、それは恐らく自分から人を遠ざけてるだけ。
…俺とは違う。
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