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どこからともなく聞こえる合成音声は、管理AIのディヴァーギルのものだ。 この塔の中のどこでも彼はこちらの話を聞いているし、呼びかければ応えてくれる。 「世辞ではないよ。おまえもどうだい、ナディーラ」 ルカーはとり肉を少し手にとって、足元の獣に差し出した。 人造の流動体生物のナディーラは、元となったミリナイの生物と同じような食事は必要としない。 だがあるじはときどき彼に自分の食物を与えた。 黒い獣は、あるじの手からそれをもらう。 かの獣には触手もあったが、このようなときには犬など他の四つ足と同じように口で直接受け取る。 「美味しいだろう?」 「はい」 そう応じたが、ナディーラには人的な味覚はない。厳密には、美味い不味いなどは判断できなかった。 ただ、味が変わっていることはわかった。そして、ディヴァーギルが当代ルカーのために合成法(レシピ)を調整しているのは知っていた。 ディヴァーギルはなにも応えなかった。 あるじはただ微笑んで、黒い獣の頭を撫ぜた。
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