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その日の夜、眠っていた少年の部屋の屋根に大穴があいた。原因は不明だった。
そしてその次の日、学校からの帰り道、少年は突然その日常からすがたを消した。
初めてセジェンダの裏側にある観測塔に招かれたとき、彼の持ち物はそのとき身につけていた学生服と学生鞄だけだった。
それから10年以上が経ち、彼の母校の制服の意匠も変わったが、彼はほとんど変わらなかった。
14歳の少年のすがたのまま、ルカーとしての務めを果たしている。
観測塔に、彼のものと言えるものはほとんど増えてはいなかった。
ときおり従僕が、彼の役に立つようなものを先代の持ち物の中から見つくろってきた。
たとえば寝台脇の側卓にある時計。暦もついていて、ミリナイの時を教えてくれる。
岩と氷の惑星では時間の感覚は失われがちだ。
目覚まし機能もついていたが、その機能が使われたことはまだない。
石とも金属ともつかない滑らかな素材でできた寝室は、殺風景なものだった。
作りつけの衣装棚のほかは寝台とちいさな側卓くらいしかなく、ガランとしている。
部屋の中央にある大きな寝台で、暗褐色の髪の少年は目を覚ました。
寝台の下には、熊と狼の間のような黒い獣がうずくまっている。
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