9人が本棚に入れています
本棚に追加
彼または彼女をサポートするための機構が用意されていた。
塔を管理する電脳組織AI・ディヴァーギルと、ルカーの手足として働くしもべとして作られた流動体生物と泥人形だ。
彼らはみな人工的に作られたものだが、意思があり、忠実である。
今ルカーに付き従う黒い獣は、その流動体生物が変化したものだった。
不定形の生物である彼は、どんな姿にでもなることができる。しかし質量はほぼ決まっていて、あまり大きなものや小さなものにはなれないし、空は飛べなかった。
基本的には、かつてミリナイに実在した黒い獣の姿を模している。黒い毛皮にするどい牙とつめ、長い尾と一本の触手を持つ、四つ足の獣だ。
なぜそのすがたなのかについて、当代のルカーはくわしく知らなかった。おそらく、初代の趣味だろうと推測していた。
着替えをすませ食堂へ向かうため居住空間の廊下を歩いていると、窓の外に、きらきらと白いものが舞うのが見えた。
「氷の羽だ」
「ディですね。あなたがお目覚めなのがうれしいのでしょう」
「大げさだな」
ルカーは苦笑した。
ディまたはディたちと呼ばれる彼らは、ナディーラとはまた別の意味で特定のかたちを持たぬ生物だった。
最初のコメントを投稿しよう!