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1.
寝台に横たわる少年のはだかの痩躯が大きく痙攣すると、それを覆っていた黄金色の膠化体が漿状となり寝台からゆっくりとすべり降りてゆく。
床に到達するとそれは、徐々に四つ足の黒い獣のすがたを成していった。
「おまえには悪いと思っている」
気だるげに四肢を投げ出したまま、いつの間にか目を開けた少年がかすれる声でつぶやいた。
視線は虚空を見ている。
「おまえたちは、こんなことをするためにいるわけではあるまいに」
「あなたの御心にかなうようにお仕えすることが、私の務めです」
少年の言葉に、黒い獣は人の声で応じた。
「そうだ。おまえは、おれの命令に逆らえない」
少年は目を閉じる。
「だがどうか、嫌なら正直にそう言ってくれ」
「我々はあなたに嘘を吐きません」
「そうか」
「はい」
「ならよいのだが」
「お休みください、ご主人様。あなたはお疲れです」
「――ああ。眠るよ」
「おやすみなさい」
黒い獣は静かにその場をあとにした。
***
宇宙の辺境、とある中くらいの棒渦巻銀河の端のほうに、ふたごのように隣り合った星があった。
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