吸血鬼に狙われる…吸血鬼?

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牙を入れる位置を指で探られる。首筋を撫でて、顎を上げられて、耳元で声がする。 "暴れたりしたらどうなるか、お前が一番解っているだろう" 吸血中に暴れるなんて、下手したら血が吹き出て大惨事だ。それどころか、血管を故意に傷付けられでもしたら命に関わる。 「クソッ糞野郎、絶対お前なんかに、懇願なんか、しなッ、っひぃ、」 ブツリ、と牙が刺さる。体が震える。怖くて仕方がない。奴の腕に必死に探りついて、涙が溢れた。けれど宥めるようにシャツ越しに肩から腕にかけて何度も撫でられて、とうとう牙が埋まる。けれど痛みは全く無い。あるのは、首筋の違和感とじわじわと上がる熱と腰に痺れるような快感。 「んァ、ぁ、ぁ」 「……」 「ッんぃ、っ、ぃあ、!ッ」 そして次に来たのは、強い刺激。無理矢理吸引されたんだ。その強引さに抗う術も力も無い。あぁ、血を吸われる。俺、吸血鬼なのに。こんなのって、本当、バカげてる。 「ぁ、……、は、ぁ…………」 「中々上物だ…美味いな…、?おい、」 あー、ダメだ、意識が薄れる。すげえ寒い。そう言えば俺、ここ暫く吸血してなかった。そうだ、そうだった。 「……、うぅ、寒い」 「ッオーキッド!今すぐ…………」 クラリ、と目の前の世界が回った、気がした。 暗闇に手を伸ばす。するとそこには扉があった。開くと薄暗い部屋だった。ベッドに眠るのは、学生時代の友達で、そこでこれは夢だと解る。彼の首筋を震える手つきで探り、牙を出して、それから。 不安で押し潰されそうな心を落ち着かせる。大丈夫、大丈夫、吸血しても、彼は淫らな夢を見たな、ぐらいで終わるから。美味しそうだ、ほら、直ぐにでも食べてしまいたい。大丈夫、だから、牙を刺して、吸血を、……。 「……ッ!」 バチリ、と目が覚めた。嫌に心臓が高鳴って、冷や汗が伝う。 「お目覚メ、でスカ」 「、っ俺、……あれ、何が」 見れば腕に針が刺さり、上には血液パック。それから、横たわるベッドの横で良いソファに座るのはレキトだ。 「貧血だ」 「……貧血?」 「あぁそうだ、七也、と言ったか、お前、暫く吸血していないな」 「…………だったら、何だよ」 「何故だ?」 「……、仕事が忙しいからだ、」 フイ、と顔を避けてそう返す。
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