吸血鬼に狙われる…吸血鬼?

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「そうか……本当に?」 「…………」 これ以上何か言ったら絶対もっと不振がられるに違いない。しかし、危なかった、でも吸われたには、吸われたんだよな。 そろり、と首筋に手をやって、痕をなぞる。俺、吸血鬼なのに……牙を入れられて吸血されて、男なのに、感じてしまった。 その事実に両手で顔を覆って唸った。 「ならば今から女を呼ぶ、存分に吸血しろ」 「……は、え!?やめ、そんな事しなくて……っ」 言われた事に慌ててベッドから起きようとしたが、手を付いた瞬間けれど体を支えられずに頭から落ちそうになって瞬時に逞しい腕に支えられる。 「動くな。それが嫌なら今日一日は安静にしているんだな、オーキッド、世話を頼む。私は仕事へ行く」 「、、俺も、仕事に、」 「ふん、そんな姿で居られては足手まといだ、まあ、今日の分はもう頂いたからな、お前の仕事は終わりだ」 それってつまり、吸血されるのが仕事、って事かよ?そんなのは間違ってる。プロデューサーも秘書も大切な役割を担う人間だ。けれどレキトはいらないとばかりに鼻をならすと黒い蝙蝠となって闇に消えた。途端に肩の力が抜けて、来たのは喪失にも似た、空虚な気持ちだった。 「大丈ブ、でスか?お飲み物は召シ上がりマスか?」 「……ありがとう、頂こうかな」 ハァ、と深い溜め息が出る。こんな事になったのは、そもそもの自分の嘘のせいだ。 それから、どうしようもない、吸血鬼としての欠陥。 普通の吸血鬼は吸血する際、相手を興奮状態にする。けれど俺の場合、吸血すると自分が興奮状態に陥る。有り得ない。こんなんでよく、ここまで生きてこれた、とつくづく思う。 だから、吸血する際は寝ている相手の隣でとんでもない醜態を晒す事になる。例え誰も見ていなくたって、自分の心が耐えられない。 だからいつも、ギリギリまで我慢するのだ。仕事に人生に生き甲斐を見出だし、あぁ、普通の人間であったなら、どれだけ幸せだったろう、なんて考えて。 「お口に、合イマす、カ?」 「うん、美味しい、……美味しいよ」
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