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欠陥吸血鬼の……秘密?
「う~ん、久々飛んでると気持ち良いなあ」
あの後、練習に練習を重ね、無事に窓から外へ脱出成功し、毎日の貧血状態から多少回復した体は、家々の屋根の下を頼りにちょっと休んでは飛行する、を繰り返しながら優雅に飛んでいた。
空にある太陽の光も、混血種にとっては真夏の熱さぐらいの温度に感じる。純潔にとったらあれは灼熱のマグマらしいけど。
我が家を目指して一っ飛び、といきたい所だけど、折角こんな早く帰れたのだから、と誰もいない道に降りて辺りをくまなく確認し、ぐぬぬ、とまた声を出しながら人間へ戻った。ちなみに着ているこのスーツは吸血鬼御用達の特別製、ミチトさん指揮の元に作られた……まあ、伸縮自在の奴である。
戻った瞬間は少々パツパツしてしまうのが難点だが、伸ばせば普通のスーツと見分けはつかない。そんな便利グッズはさておき、堂々と歩き、見えた建物に思わず顔が綻んだ。時間もぴったりみたいで良かった。
「あら!瀬戸さんこんにちは!」
「あ、どうもお世話になっております」
「今日はお仕事は大丈夫なんですか?」
「はい、早めに終わったので「パパ~!」
声がした方に顔を向けると、着替えもそこそこに小さな男の子が走ってくる。
俺の愛しい愛しい、目に入れたって痛くない宝物。
転ばないか心配になりながらトタトタと走って来た子は一目散に俺の足に抱き付くと、きっと一番強い力でぎゅうぎゅうに両足を掴んで離さなくなる。
「カイ、おかえり」
「もうパパおしごとはいいの?くびになった?」
「クビにはなってないぞ」
「良かったね~カイ君、今日はパパと一緒だ、あれあれ、でもカイくん、お鞄が無いよ」
「あ!わすれた!」
パパはここから一歩も動いちゃだめだよ、と命令されて先生と共に教室に戻っていく我が息子。
何時もは母さんに迎えを任せて、寝顔しか見れない日もある。今日は迎えに来れたから、と母さんに連絡をして、走って来るカイを、今度は両手一杯に抱き留めたのだった。
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