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『レキトがねえ、君が来なければ仕事に出ない、って言い張ってて、瀬戸くん、頼んだよ~』
朝から電話がかかってきて、画面を見れば社長の文字。慌てて出れば苦笑したようなミチトさんの声が耳に響き、項垂れた。
あぁ、あぁ、そんな奴、今すぐクビにしてやればいいのに。だが、そう簡単にはいかないのがこの業界。カイを保育所に送り届ける間にも街には至るところにレキトの顔、レキトの文字、大画面でレキトレキト。そんなレキト様から指定された場所までタクシーで向かう……のだが。
「お客さん、本当にここ?」
「え、えぇ、地図は、送られたものなので…」
「出るって噂だよ~ここ」
レキトから指示された場所は、昼間とはいえ、所々窓ガラスが割れているような建物だった。異様な雰囲気を感じる。誰か嘘と言ってくれ。
タクシーを名残惜しそうに見送ってから、その建物に向かう。入り口から中に入れば、その異様さは増した。
しかし、何で、俺は、今、こんな昼間から薄暗い廃墟に居るんだ?少し前までは、アイドルユニットのプロデューサーだったのに。何故だ?どこで間違えた?
「遅かったな、プロデューサー」
「うわッ」
急に後ろから低い声が聞こえて振り返る。バサバサと何か黒い影が空中を飛ぶ。何個か部屋を抜けて、その後に付いていけば、大きく開けた場所に出る。そして今この時、この光景に、何故こんな場所まで案内されたのかが理解出来た。
天井が少し崩れて光が差し込む。けれどそれは淡くて弱い光だ。その下に、場に不釣り合いな綺麗なソファにぐったりと横たわる、3人の女性達がいた。
「、ッなん、彼女達は、」
「餌だよ」
「は、?」
レキトが急に目の前に姿を表す。
「大丈夫だ、死んではいない、何、君の為の食事だ」
「誘拐、したのか?」
「誘拐?違うな……これは彼女達にとって仕事だ」
仕事?吸血される事が?
「まあ、ちょっとした嘘はついてはいるが」
「お前、何、考えてっ、今すぐ彼女達を家に送り返すぞ、」
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