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吸血鬼って知っているだろうか?彼らは闇夜に生きて夜な夜な好みの血液の匂いを辿り、見た目の美しさで相手を惑わしながら、月の光で煌めく牙を出してぶっすりと首筋に食らい付くのだ。
その際、相手は悲鳴を上げるのではなく、まるで発情しているかのように体を震わせて甘く鳴き叫ぶ。少量ならば頂いても気付かない、きっと、次の日に起きて、昨日の夢は何て淫らだったんだ、と赤くなるぐらいだ。そこで首筋を見た所で蚊に刺された、ぐらいにしか思わないだろう。
そう、普通の吸血鬼は、吸血する時に相手を発情させられる、だが俺は、俺と言う奴は……。
「あぁ……腹、減った……」
ぎゅるるるる、と腹が鳴る。会社の机で乾パンを貪る日々だ。もうダメだ、いい加減にしてくれ、人間と動物の病院はあるのに何でこの世界には吸血鬼の病院は無いんだ、俺達は動物以下とでも言うのか。
「よう、おはよう瀬戸!今日も良い天気だな~!」
「……やめてくれ、やめてくれ、そんなツヤツヤした肌で元気に俺に挨拶をするな」
「、は、まさか瀬戸……お前、まだ吸血していないのか!?」
「うるさい、くそ、つか今度は誰を食ったんだよ、炎琉!まさか自分のアイドルの子達には手を出していないだろうな!?」
「どう、どう、落ち着け、出すわけ無いだろう、彼女達はまだ12歳だぞ、俺は熟女派だ!よって手を出したのは女優の」
「もういい!それが解ればいい、もう聞きたくない仕事に戻る……」
耳を塞いで立ち上がる。ああ、仕事、仕事だ。まだまだ出たばかりのあの可愛い素直な子達に癒しと元気を貰いに行こう、プロデューサー、瀬戸七也、今日も自分が吸血鬼だと言う事は忘れて、彼女達を一流のアイドルに育て上げる為にせっせと働きに……。
「あ、それなんだが、瀬戸、お前、担当変わったらしいぞ」
「……………………え?」
彼女、達を……一流のアイドル、に、。
今、何て?
「やあ、瀬戸くん、悪いねえ、ちょっとある子をねえ、育てる、というか、手懐けて欲しいんだよねえ、」
ニッコリと、机に手を付いて笑うのはこのアイドル事務所を立ち上げた社長であらせられる、静寂ミチトさんだ。その手腕もさる事ながら、美貌も雰囲気も完璧な吸血鬼様である。そう、この事務所、アイドル以外は皆吸血鬼である。
アイドルにもちょこちょこ吸血鬼はいるが、プロデューサーは全員吸血鬼だ。
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