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伸ばされた手にシーツごと体を抱き寄せられて固まってしまう。
てか、今、なんて?私専用?
「!、」
「確かめるだけだ、気を楽にしていろ」
向かい合わせで抱き締められながら、背中を掌が這う。
いいや、そんな事を言って油断させた隙にまた強姦するに決まっている。瞼を瞑れば昨日の悪夢が蘇るみたいに、体が僅かに震えてしまっていた。でもそれを悟られたくない、と思う心もあって、震えを隠したくて強く唇を引き結ぶ。
「……七也」
「、っ、」
「……血が滲むぞ……勿体無い事をするな」
「……、ん、っ」
ぺろり、と引き結んだ唇を舐められて、乗せるだけの口付けをされてしまう。
おかしい、と思うのは。強姦された筈なのにやけに優しくしてくる事だ。あぁ、でも、俺の血はレキトにとったらドラッグみたいに病み付きな味なんだったか?それなら機嫌を取るのも納得か。
だからって同意なんてするものか。一生、こいつと一緒なんてゴメンだ。次に社長であるミチトさんに会った時、直ぐにでも担当を外して貰う。こんなんじゃ、お互い仕事なんて出来やしないだろう。何より、これはもうファンを裏切った行為に他ならない。何なら暫くの謹慎処分だって受け入れる。レキトと離れられるなら、何だってするぞ!
『あ~もしもし、流石!瀬戸くん!もうレキトを手懐けるなんて、やるねえ、もう感動しちゃったよ~』
「え、あの?」
『今日のレキトの仕事ぶりは本当に最高だったって、スポンサーやスタッフの人からひっきりなしに電話が来てね、機嫌もかなり良かったらしいじゃないか~この調子で頑張ってねえ~』
プツン、ツーツー……
え、何が起こってるんでしょうか。
レキトが居ない、レキトの部屋で、着替えも済ませて、ソファに投げられた携帯でミチトさんに電話をすれば大層べた褒めされて。目が点になった。
窓の外を見ればもうすぐ夕方になりそうな時間だ。ついさっきオーキッドが持ってきたワゴンに乗せた食事をちびちび食いながら、昨日、今日と全く仕事が出来ていない事実に項垂れたのだった。
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