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「あの、嘘でしょ、ミチトさん!あの子達はどうなるんですか!」
「大丈夫、ちゃんと他に任せたから、それより七也くん、なんか顔色悪いねえ、ちゃんと血吸ってる?」
「、大丈夫です、何も問題はありません」
「ならいいんだけど~」
鋭い指摘に一瞬たじろぐ。けど話は直ぐに、次に担当するアイドルの話へと変わる。
「この子なんだけど」
ミチトさんが見せてくれた書類を受け取って、驚愕した。だって俺としては、どんな新人を育てるのだろうか?と考えていたのに、そこに居たのは誰もが知っていると言っても過言ではない、CMもドラマも引っ張りだこの今超絶売れっ子の顔が。
「レキト……?」
「そう、レキト……君に、頼めないかな」
「でも、レキトは、」
「解ってる、君は新人担当だったのに、何故か、と言いたいのだろう、君は純血なんだよね?」
「え、は、はい」
ギクリ、とした。
「なら大丈夫、前の担当はさ、レキトの純朴な食料になってしまってねえ、何でも彼の言う事を聞いてしまうし、どこでも構わず吸血を……「あの、え、だって、同族ですよね?」
「あ、言ってなかったねえ、レキトは純血の中でも最も濃い血族でねえ、同族であっても親や自分が人間との混血である場合、吸血出来ちゃうんだよ」
「え、へ~凄いですねえぇ……」
社長、すみません、俺は嘘つきました、って今更父親が人間でしたなんて言えないよおぉ。だってバレないと思うじゃないか、人間の父親とはとっくの昔に離婚して今は吸血鬼の義理の父親が居るんだから、いやバレてはいないけど、けどさあ。
これは、まずい事になった。
取り敢えず本人に会ってみて、決断はそれからでも、と笑みを深くしながらミチトさんに言われて返事をした。
会ってみて、って、会わなくたって知っている。今だってガラス張りのフロアの外の世界じゃ大画面でレキトの姿を見る。身長は有に190を越えて、長く黒い髪を揺らして歩く姿は男らしい。どんな服も似合ってしまいそうだが、彼の好む服装はいつも真っ黒だ。
そして彼の人気の一番は、多分その雰囲気と世界、他者を寄せ付けないような絶対的なオーラにあるんだろう。それはレキトが純血の吸血鬼であるから、それもあるんだろうけど、染み出すような恐怖は、彼自身から出ているものだ。
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