吸血鬼に狙われる…吸血鬼?

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彼は歌が歌える訳でも、演技が出来る訳でも、話が上手い訳でもない。ただ、そこにいる。人は気付かないんだろうが、吸血鬼の僕達から見たらレキトは、異様だ。 何を考え、何をしたくて、こんな事をしているのか、まるで解らない。彼がどこから来て、今いくつなのかも。 渡された資料を見ても人間的な表面しか書かれていなくて、まるで役立たずだ。 「こんにちは」 「え、あぁ、どうも」 不意に声をかけられて、急いでソファから立ち上がる。目の前の人間は人の良い笑みをして髪を掻き上げる女性だ。大胆に開いた胸元、首筋に傷を見つけて、あぁ、食われた跡だ、と瞬時に悟る。 「瀬戸様、ですね?新しいプロデューサーの?」 「ぁ、はぃ、えと、レキトの関係者の方ですか?」 「あら、これはすみません、私、どうぞこちらを」 丁寧に名刺を渡されて、こちらも丁寧に渡す。そこには名前と、レキトの秘書、兼プロデュース担当と書かれている。 そこで思う、自分が任命されたと言うことは、この人は外された、人?レキトの所まで案内してくれるのだろうか。 「お話は無かった事にして下さいませんか瀬戸様」 「え、?いや、すみません、僕はレキトに会ってみて、と言われて来ただけですので……権限は何も無いんですよ…」 「そんなの承知ですわ、貴方、社長と仲が宜しいのでしょう、なら掛け合って下さるだけでいいの」 笑みを崩す事なくそう、目の前の女性は言う。確かに、自分としてもかなりまずい状況ではあるし、そうしたいのは山々だが、レキトに会おうと思ったのにもちゃんと理由がある。それはミチトさんに言われたからだ。それだけ?と人は思うかもしれない、けどミチトさんが俺をレキトの側に置きたいと、会ってみてくれ、と勧めた。その判断を自分で確かめたい、彼の判断が完全に間違いだった事は今までで一度も無かったから。今回はもしかしたらハズレかもしれないけど。 「すみません、それは出来ません、取り敢えず、会ってみない事には」 「会わなくたって解るわ、貴方にレキトは相応しくない、相応しいのは私だけですから、ね、解ります?」 「あの、少し落ち着いて下さいませんか、何も今すぐレキトのプロデューサーを変える訳では無いですし、会って僕の判断次第では無理です、と社長に伝えますし」 「会ったら絶対貴方はレキトを奪うに決まってる!!」 あぁ、まずい。
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