吸血鬼に狙われる…吸血鬼?

5/12
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
怒りを露にして女が牙を剥き出しにする。確かレキトは混血の吸血鬼も食料に出来たんだったか。 何とか落ち着いて貰おうと手を伸ばした、けど瞬間、その手を取られて女が大きく口を開ける。血を吸われる事は無いだろうけど、骨までゴリゴリいかれる可能性は大いにあって、そうなればこの話は流れてしまう。 「やめ……ッ!」 プツリ、牙が簡単にスーツの生地を突き破り、腕の皮膚を突いた、けどピタリ、とそこで女の動きが止まる。 何処からともなく、バサバサと蝙蝠のような黒い影が女の後ろで形を作る。それは大きな人の形になり、少し笑みをうかべた、怖いぐらいに整った顔になる。レキトだ。 「あぁ、自由にした途端これか……お前の血は不味くて飲めたもんじゃないんだが……吸血だけでもして欲しいのか?」 「欲しい、……欲しいです、レキト様、」 画面に写っていた長い髪ではなく、短く揃えた髪をオールバックにした姿は最古の吸血鬼を思わせる。それに加えて段々と露になるのは真っ黒と言うより、血染めのような暗さの服装。思わず息を呑んだ。 「あア!!ぁ、あああッ!いい!いい!」 レキトが女の顎に手をやり、無理矢理に反らさせ、首筋に深く牙を突き刺す。血が一滴も外に出ない上に、ちゃんと吸える所に挿す、まるでお手本だ。俺でさえそんな綺麗に血を吸えない。女は光沢とした表情で叫びながら力が抜けたのか足腰をガクガクさせて目を見開く。まるでホラー映画。いやまさしくホラーだ。ともすればレキトの腕の中で仰け反ったままピクリともしなくなって、見ている俺の血の気が引いていく。 「おい、おい、っやり過ぎだって!」 聞こえて無いのか、涼しい顔をして女の首から牙を抜いたレキトは口に溜まった血液を床に吐き出した。頼むからそれもやめてくれ、絨毯に染みるし、床にも染みるし、染みになったら取れないし、多分ミチトさんに怒られるのは確実に俺だ。 ぐったりした女をソファに投げるように乗せたレキトが離れた隙に、慌てて側に寄って呼吸を確かめる。 良かった、取り敢えず死んでない。マジで死んだかと思った、焦った。 「……お前、名前は?」 「うわ!、な、名前?」 「……血の匂いがするな、お前、混血か?「違う!純血だ!完全に純血!何なら身元を調べてくれたっていい!俺の血は、純血だ!!」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!