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その勘が言っているのだ、従う他ない気もするけど。
「じゃ、今日の予定をレキトにお願いね」
「え、……今日、から?」
「そりゃ、仕事は入って来るし、元のプロデューサーは病院送りだし、ねぇ?」
「……ぅ……はい」
「あ、それから、家はアイドル事務所だけどレキトの場合アイドルとはまたくくりが違うから、何というか、レキトは歌も躍りもやらないし、タレントと考えてくれていいよ」
「え、と……それって」
「プロデューサー、というよりかは秘書に近いかもね」
「…………」
ガーーン、まさに、その表現がピッタリな現状。プロデューサー、アイドル、それが自分の生き甲斐であり、今までのプロデューサーとしての仕事が走馬灯のように駆け巡る。まあまあそう、肩を落とさず、なんてミチトさんは笑うが、こっちは笑い事じゃない。
「それからレキト、自宅に居るから」
「は、?」
「ここ、住所ね。大丈夫、仕事は言えばキッチリやってくれるし、問題はないよ」
「……」
問題大有りでしょ?普通あっちから事務所に来るべきでしょ!?社会ってそういうもんでしょ!?
しかし、社長に逆らえないのもまた社会。反論もせず受け取って、タクシーを呼んでレキトの自宅近くを指示し会社を後にする。
知っている道から外れて知らない道を通り、山に入って林を抜けて、空まで覆い尽くす林道のど真ん中で降ろされて思わず溜め息をついた。
あぁ、タクシーが行ってしまう。これでもう戻れない。とんでもなくドキドキしてきた。恐怖で。
道を辿って歩いて行くと、段々見えてくる尖った屋根に、足がすくむ。そこだけ丸く木々が生えていないばかりか、回りの木々は折れ曲がっていたり捻れていたり不気味すぎて嫌になる。完全に見えた外観は、大きな洋館だった。古城、と言っても違和感無さそうだ。とにかく、かなり不気味。
それでも行かなければならない。何故なら俺は従順な社会人である。今を過ぎればもしかしたらまたプロデューサーに戻れるかも。可愛いあの子達と切磋琢磨する日々に戻れるのならば、今は全てを我慢しよう。頑張れ俺、負けるな社会人、屈したら終わりだ。
思いきって扉を開けて、中に入った。
すると電気も付いていない廊下の奥から、何かが。
「何かゴヨウですカ?」
「ひえっ!!」
「ごシュジン様にゴヨウですカ?」
「、、、」
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