吸血鬼に狙われる…吸血鬼?

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ひたすら、ひたすら頷く。だってカタカタ音を立てながら不自然な角度に首を曲げながら向かって来るそれは、完全に人じゃない。陶器人形だ。女性を型どりブロンドの髪で綺麗ではあるが、目は開きっぱなしだし動きも怖い。 とんでもないホラーに思わず目を強く瞑る。ダメだ、怖すぎて吐き気してきた。出直そう。 「直ぐニ、呼んでキマスね」 「はい、はい、あ、いえ、い、あの、」 口も回らなくなってきた。もうやだ、やだよー。 「来たか」 「!」 思った直後、声がして、開いた直ぐ側に端正な男の顔。何の違和感もなく、自然の事のように何故か腰に手を回されて、眉を寄せた。 「待っていた、こちらだ」 「え、いや、レキト、直ぐに、事務所に、仕事が」 「朝食がまだなんだ、付き合ってくれないか」 「……、朝食なら、行きながらでも」 「あぁ、食べ歩き、というものか?あれは好かない、食事はゆっくり食べたいのでね」 グ、っと寄せられた腰に、慌てる。顔が近付き、両手を押し出して僅かに離す。 「オーキッド、朝食の準備は出来ているかな?」 「ハイ、ごシュジン様、」 「新しいプロデューサーだそうだ、歓迎しなくては」 い、いらない。歓迎会なんか開かなくていい。早く日常に戻りたい。 長い廊下を腰を抱かれたまま歩き、ともすれば広い部屋に出る。長いテーブルに、長い椅子。天井から釣り下がるランプに、漂う食事の匂い。 「さあ、席へ」 「、」 逆らえない何かを感じて。席に着いてしまう。何者なんだろうか、と本気で思う。画面に写る彼を見ている時も思ったが、普通の吸血鬼じゃない事は確かだ。陶器人形を動かせる事なんて誰もが出来る訳じゃない。しかもそんなの、昔は物を動かせる人が居たんだ、ぐらいの噂話だった筈だ。それが今、目の前で人形はコップに紅茶を注いでいる。 「オーキッドが珍しいかな?」 「、そりゃ、でも、どうやって」 「簡単さ、彼女の中には我が家の血が染み渡っていてね、今は私の血が流れている」 「……、」 解らない。仕組みが全く解らない。例え俺の血を陶器人形に入れた所で絶対動く気がしないし、何やってんだろ俺、って現実に苛まれて終わる気がする。 「それより沢山食べてくれ君の為に用意した」 「……こんな事しなくても…」 「絆を深めようじゃないかプロデューサー」 お前にプロデューサーって言われても全然嬉しくない。
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