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『アカハネコウルマウ。その個体はまだ子供だが、成長してもそう大きくはならない小型竜だ。温厚な性格で、毒を持っていたり火を吐いたりするようなこともない。計器の情報からは、かつてネファヴィリーの一団が調査したときより進化した様子も見られない。我々にとっては無害と言ってよいだろう。反面、有益ということもない。小型なうえに目立つ色をしているため、常に個体数の少ない稀少種ではあるが』
「稀少種か。では、生き残るのためにおれに近づいたのか?」
ルカーは手をのばし、肩のにとまる赤い小型竜の頭を撫ぜた。
彼または彼女は抵抗も逃げ出しもせず、ただすこし目をすがめた。
『おそらくは』
「他のものは後込みしたが、最初の一歩を踏み出したのか。なかなか勇敢だ」
しかしルカーはそう言うと、手を振って小型竜を肩から追い払う。
「だが見込み違いだ」
「はい」
「我々こそがおまえたちの楽園を滅ぼしにきたのだからな」
追い払われても赤い小型竜は去らず、ルカーの周りを旋回する。
「彼には、今危険から身を守ることが大事なのでしょう」
「そのようだな」
「如何いたしましょうか」
「放っておこう。無害なようだしな」
「承知しました」
保護地域の生物には夜行性のものも多くいるため、一行はこの地で夜を明かすことになっていた。
日が沈み、すっかり暗くなった密林を再び歩きまわる。
明かりと言えるものは月明かりと星明りのみというような環境は、普通のミリナイ人なら視界はほぼゼロと言っていいほどだったが、ルカーとそのしもべたちには関係がない。昼間と変わらない足取りで計測を続けた。
ナディーラが念のため人のかたちをとってから、半日以上が経っていた。
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