1.

16/20
前へ
/31ページ
次へ
ルカーがそこへ落ち着いてもなお、昼間からついてきた赤い小型竜はルカーのそばにとどまっていた。 「(ウルマウ)はどのくらい生きるものなんだ?」 手慰みのように彼の背を撫ぜながら、ルカーが言った。 傍らにひかえるナディーラにではなく、ディヴァーギルへの質問だ。 『500年前後の種族が多い。長い種族は1000年以上も生きるが、100年足らずの短い種族もある』 「これは?」 『アカハネコウルマウの平均寿命は320年ほどだ。その個体は現在12歳ていどと推測される。あと300年ほどの命だろう』 「へえ」 ルカーは小型竜の背を撫ぜるのをやめ、彼を追い払うように手を振った。 追い立てられた小型竜は一時はルカーのそばをはなれたが、その上空を二、三周するとまたルカーのところへと戻った。 今度は膝の上に降りる。 『もしルカーが希望するのであれば、塔に連れ帰るのを許可する』 そう言ったのはなんと、ディヴァーギルだった。 あまりに意外な言葉に、一瞬理解が遅れた。 すこし遅れてその意味を理解したルカーとナディーラは、思わず顔を見合わせる。 「どうしたディヴァーギル。いやに寛容だな。おれの機嫌を取ろうとしているのか?」 『私に、あなたの機嫌をとる必要などない』 「そうだな。そのとおりだ。必要ない」     
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加