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2.
***
「静かだな」
「はい」
塔はいつも静かで穏やかだったが、それとも違う静けさがおとずれていた。
普段なら存在するわずかな雑音すらないような状態だ。
ルカーとナディーラは違和感をおぼえていた。
「ディヴァーギルの感応が薄い」
「ええ。時折感じますが、ほとんど消えているようですね」
空気が、ビリ、とふるえたような気がした。
ディヴァーギルの感応を途切れ途切れに感じる。
「ジーネゥ!」
ルカーは、この場にいない“彼”を呼んだ。
“彼”のしわざだと思った。そしてそれはおそらく正解だ。
「(なんだね、ルカー)」
いつもどおり鷹揚な声だった。しかしどこか演出されたようなものを感じる。
「ディヴァーギルとのテレパシーが弱い。あなたのせいだろう?」
「(心配ない。彼は無事だ)」
「当たり前だ」
「(おまえたちに面倒はかけんよ。ただ、彼と仲良くなろうと思ってな)」
ルカーとナディーラは、わずかながら事に不穏さを感じた。ふたりとも、いつぞやルカーが“彼”に言ったことをおぼえていた。
「ディヴァーギル。応えろ」
ルカーは直接ディヴァーギルを呼んだ。
『ルカー。私は――問題ない』
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