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声がすれば感応も強まるが、まだいつもどおりとは言えないような気がした。
「本当に?」
『ああ。私は嘘をつかない。通常の業務はつつがなく行える』
「ならばよいのだが」
『私は任務を怠らない』
「もちろん。それはわかっているよ」
「大丈夫でしょうか」
ナディーラがどこか気づかわしげに言った。
「問題があるのならディヴァーギルがそう言うだろう」
ルカーは、彼のしもべを落ち着かせるようにその背を撫ぜる。
「そうですね。しかし仲良くというのは」
「手放しに喜べるかどうか、軽々には判断できないな。どうなるかはわからんが――」
「はい」
「まあいい。いざとなればおれが始末をつける」
ディヴァーギルの“不在”による静けさはしばらく続いた。
混濁する意識。
感応能力の過干渉に振りまわされている。
感応能力の過干渉を身をもって――現実に身は持たぬ存在ではあるが――体験するとは考えたこともなかった。
塔の中を動きまわられていたときとは、ほどが違う。
意識をじかに揺さぶられる感覚。
近づきすぎれば、やさしく撫でられるだけでもそれは強い刺激になった。
もし肉体があったのなら、内臓を掻きまわされるようとでもいうのだろうか。
塔の基幹機能は問題なく働いている。
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