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1.
今日も今日とて、遺物の回収の任務があった。
それ自体は大して問題のない仕事だった。
山奥に落っこちていたそれを、拾ってくるだけの簡単な作業だ。
たったひとつ、手のひらサイズの小さな遺物だった。
人手もいらないし、力もいらない。近隣住民ともめるような危険もない。
それは、人里離れたちいさな滝の裏に隠れるように落ちていた。
回収するためにミリナイに降りるルカーにナディーラがついて行ったのも、ただいつもの習慣といったていどの理由だった。
遺物の回収は、ほとんど問題なく終わった。
ただひとつ、ほんのちいさな問題を除いては。
ルカーが触れた瞬間、その遺物は発動し、その力をルカーに対して発揮した。
結果、ルカーは幼い女児のすがたになった。
「なぜ女児なのだ」
7歳児ほどの幼女が、眉をしかめ、舌たらずの口調で言った。
遺物の力で幼子のすがたと化したルカーである。
暗褐色の髪と青い瞳は彼のままだが、身長は三分の二以下になり、あきらかに女子だった。
いつもの服は寸法があわなかったので、今着ているのはディヴァーギルが急遽新たにしつらえた筒型衣だ。
ついさきほど、医務室で検査を終えたところだった。
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