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四種類の悪夢
一時期、嫌な夢を立て続けに、そして繰り返し見ていた。
焼け死ぬ
溺れ死ぬ。
何かに食われて死ぬ。
餓死する。
四つの死に方を、俺は夜ごと夢の中で繰り返した。
幸いにも、夢だから苦痛は感じなかったが、朝起きるとたまらなく嫌な気持になったものだ。
いったいどうしてこんな夢を見るのだろう。そうまでストレスが溜まっているのか?
夢を見続けていた当時はかなり悩んだが、いつしか悪夢を見ることはなくなり、嫌な思い出ということもあって、俺は夢のことを忘れていた。
たった今までは。
機内アナウンスを聞くまでもなく、海外出張のために乗った飛行機は落ちかけている。
墜落したらまず助からない。
その際、俺はどんなふうに死ぬのか。あの夢はそれを暗示していたのだ。
墜落炎上した機体内で焼け死ぬ。
海に墜落した後溺れ死ぬ。
墜落後もギリギリ生き延びるが、鮫か何かに食われて死ぬ。
あるいは、墜落直後の死は免れられるものの、漂流の果てに飢え死にする。
いったいどれならまだマシだろう。
避けられない死を目前に、俺は、恐怖より死に方で気持ちをいっぱいにした。
四種類の悪夢…完
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