蜜色ドロップ

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「あの男の息子なんだ、母さんの仇なんだ……」  ソイツに情が移ってしまえば、この復讐計画はおじゃんになってしまう。復讐のために生きてきた日々も意味を失う。俺の存在価値もなくなってしまう。  父が護ってくれた、この命。母を殺めた男に復讐を果たして散らすのが俺の運命(さだめ)なのだ。  決意を新たにして、ソイツの観察を続ける。  人の前では微笑み続け、一人になると表情を消し、人と接するのを拒むように人気のない場所に向かう。そして、何かを求めるように空を仰ぐ。ソイツの生活はそれの繰り返しだった。  ソイツを監禁する準備を整え、拉致する機会を狙いながら後をつける日々。何度も連れ去る機会はあったのに、なかなか実行できないでいた。  ソイツを陰から見つめ続けているうちに、復讐を成し遂げたいという気持ちとは別の想いを抱き始めていたのだ。  俺とそっくりな、心が欠けたような寂しい顔をするソイツならば、俺の痛みを癒してくれるだろうか? 哀しみを抱える俺を、あの時のように撫でてくれるだろうか? もう一度、あの温もりを感じたい――。  寂しい表情に少年時代の面影を重ねて、母を求めるようにソイツを見るようになった。  だが、それも次第に違う感情に変わっていく。 「くっ……はっ、んぁぁ」  淫らに濡れるソイツに男根を突き挿す夢を見て、吐精してしまったのだ。  憎き男の最も苦しむ方法、ということで選んだソイツの凌辱。  男を苦しめるのならば、もっと酷い方法もあった。唯一の跡継ぎであるソイツの殺害。ソイツの心を操り父である男をいたぶらせる、などだ。  その中で凌辱を選んだのは、無意識にソイツを欲していたからなのか?  その日から、毎夜ソイツを想い男根を扱いて精を放つようになってしまった。  ソイツを凌辱する練習だと、吐精後の脱力感に項垂れる自分に言い聞かせる。ソイツに反応しなければ凌辱もままならない。復讐を成し遂げるために必要な行為なのだと、ソイツに欲情する自分を正当化した。  そして梅雨の中休みのあの晩、ついにソイツを監禁したのだ。
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