蜜色ドロップ

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 俺の中の汚れた感情が浄化されていく。そして、空っぽになった体は蜂蜜のような甘い想いで満たされていく。  母に抱いた想いとは違う、甘酸っぱくて切ない、だけれど温かくて幸せで、絶対に手離したくない想い。  ソイツの本心を知り、憎き男への復讐などどうでもよくなってしまった。  ソイツと愛し合い、生きていきたい。  愛を護って逝った父も、愛に生きた母も、愛に生きたいと願う俺の背中を押してくれるだろう。 「後悔しないな。では乗れ」  狼の姿になると、頷いたソイツが俺の背を跨いでしがみついてくる。  小屋の外に出ると、松明の灯りがすぐそこまで迫っていた。  ソイツは自分の洋服ではなく、俺の着物を羽織っている。  過去の自分と決別するように。必要なのは俺だけなのだと言っているように。  母との思い出の詰まった小屋を一瞥する。  俺もあの男への憎しみは此処に捨て去っていこう。母との幸せな思い出だけを持ち、愛するソイツを乗せて山奥へと駆け出す。  二人だけの棲みかを求めて――。 《終》
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