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青年のその細い手首には数多くの傷痕が刻まれていた。
それが自死を賜ろうとした痕であることは明白だ。
この青年は自分以外のモノに死をもたらす。
そう、それはまるで死神のように・・・。
「謙虚と気高い者。この二つが桂花の花言葉です」
私の言葉に青年は『謙虚と気高い者』と呟いた。
「桂花の芳香は強い。ですが、その強い芳香を放つ花は小さく目立たない。それ故に謙虚。気高い者は雨が降るとその豊かな芳香を惜しむことなく花を散らす潔さからと言われています」
私の回答に青年は神妙な面持ちで頷き、その花を自身の胸元へと引き寄せた。
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