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そう言ってくれた青年の表情は無表情だった。
この青年は酷く表情に乏しい。
しかし、それも仕方のないことだと私は了解しているし、表情がないからと言って別段、何の問題もないことだ。
「先生はいつも謙虚で気高い。・・・そんな先生を俺は心から尊敬しています」
青年の口から出たその言葉に私はただ、緩く笑むことしかできなかった。
まさかこの子の口からそんな言葉が聞けるとは夢にも思っていなかった。
私はますますこの青年に興味が湧いてしまった。
それはまるで桂花が秋風に吹かれ、その豊かな芳香を増すように密かで妖しいものだった。
嗚呼、本当に人間は面白い・・・。
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