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天竺牡丹
俺は彼の岸から出て何気なく此の岸へと足を向けてみた。
そこで俺は赤黒い天竺牡丹を目にした。
秋を感じさせる風は桂花の香りを含み、甘い。
「おや? 珍しいところで逢いましたね。雨月」
清らかな清流を思わせるその声に俺はゆっくりと振り返り、そろそろとそのモノに頭を垂れてみた。
「そう畏まることもないでしょう?」
その言葉に俺は先程よりもゆっくりと垂れた頭を押し上げ、淡く微笑んでいる萩月 伊織を凝視した。
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