天竺牡丹

1/16
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

天竺牡丹

俺は()(きし)から出て何気なく()(きし)へと足を向けてみた。 そこで俺は赤黒い天竺牡丹(てんじくぼたん)を目にした。 秋を感じさせる風は桂花(けいか)の香りを含み、甘い。 「おや? 珍しいところで逢いましたね。雨月(うげつ)」 清らかな清流を思わせるその声に俺はゆっくりと振り返り、そろそろとそのモノに(こうべ)を垂れてみた。 「そう畏まることもないでしょう?」 その言葉に俺は先程よりもゆっくりと垂れた(こうべ)を押し上げ、淡く微笑んでいる萩月(はぎづき) 伊織(いおり)を凝視した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!