天竺牡丹

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萩月(はぎづき) 伊織(いおり)は白に似た素色(そしょく)色の着物の上に黒鳶(くろとび)色の羽織を纏い、桂花(けいか)(もと)で淡く笑んでいた。 「・・・久方ぶりになります」 俺はそう言って息を吐き出した。 相変わらず不思議な気を放つ男だと思った。 萩月(はぎづき)は決して威圧的な男ではない。 むしろ柔和だ。 なのに俺は決まって気圧される。 それほどの妖気も纏っていないのに・・・だ。 しかし・・・だ。 その僅かに漏れた妖気はホンモノではないだろう。 でなければこの男が我々(もののけ)の長とまで言われることなどあり得ない。 萩月(はぎづき) 伊織(いおり)は元は人間だったと聞く。 まあ・・・それもなまじな人間ではなかっただろうが・・・。
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