1話 紫陽花の色がずっと好きでした

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タッタッタッタッタ… 階段を駆け下りるっていうより、飛び降りるっていうのはこの感覚だろうか 『♪快速急行新宿行き 次は下北沢に止まります 危ないですから黄色い線より下がって…』 次の電車に間に合うか、間に合わないか、そんなことを真っ白になった頭で考える。 ホームに降りた途端、車掌は僕をチラッと見て電車は走り出した。 ホームの向かい側の花壇にはコスモスの花が咲き始めてた。 僕の名前は神崎隼人(カンザキ ハヤト) 上京2年目、今年の春から大学2年生。 電車が過ぎて言ったホームを見ると僕はスマートホンを開いて、同じゼミの相川結(アイカワユイ)に電話をかけた。 「ごめん、おはよう!『現代政治』って今日出席してる?」 僕は少し切らた息で問いかけた。 「遅れるの?代返しとく?」 結はあまり驚いていないようだった。 僕はそんな彼に安心して「お願い」と返した。 1時間に1回しか来ない電車だったはずなのに、僕は高校時代一回も遅刻しなかった。 しかし、今ときたらどうだ? 10分に1度来る新宿行きの電車に30分も遅れて授業に向かう僕はあの頃と何が変わってしまったのだろう。 “ジモト”が嫌いな「君」と僕 僕の地元は山形。山の中にぽつんとある実業高校で3年間過ごした。 高校3年間親譲りではあったが陸上競技を続けていた。 母親は元都道府県駅伝の代表、父親は元国体選手で生活も苦しかったわけでもない。 ここだけの話、地区大会では何回も優勝したし、高校2年の時新人戦で東北大会にも行ったんだ。 スポーツ以外何も取り柄のなかった僕は、誰に言われるわけでもなく小中高と陸上を続けた。 あの頃僕は陸上が本当に好きだった。 あの頃までは良かったんだ。 僕が東京に来て大学に来た理由はそんな「陸上」を続けるため、のはずだった。 その理由は今は「バンドをやるため」に変わった。 僕は子の七光りだって言われるのが嫌で練習だけは人1倍していた。 練習もみんなが19時に帰る日は20時半頃まで練習してからいつも帰っていた。 高校2年の春から親の、友達の、みんなの僕を見る目が変わったんだ。
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