9月のフィッシュバーガー

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 兄は高校に上がると、めでたく札付きの不良になり、家に居つかなくなったので、私の生活は平和になった。あいつが不意に、帰って来るのだけが恐怖だった。  兄が家を出てしばらく経ち、何処かで働き始めたというのを風のうわさに聞いた。そして程なく、兄が女の子と一緒に住んでいる事も知った。何しろ籍を入れたとか、入れないとか。全部、母が風のうわさに聞いて来たのだけれど。  そして、兄は、また家にちょくちょく帰って来るようになった。  母にお金を貰うためだ。  母は、弱い。不良の兄がどんな目に遭おうが知った事では無いが、相手の「啓子ちゃん」の事が心配だから。 「ハルナ、お前料理くらいしろよ。啓子ちゃんはな、安く買った鶏肉を、ちゃんと小分けにして、冷凍して、節約料理して食べさせてくれるんだぞ。母さん、俺は、此処に住んでいた時よりもずっと、美味い料理を食べているよ。」  兄は嫌味たらしく母に言う。母は、色々聞きたい事もあるけれど、口やかましくするとあいつはプイっと居なくなるので、言えない。 「おい、節約して頑張ってくれてるけども、その彼女が苦労しても足りないから、ちょっと協力してくれると助かるんだよ。」  段々と語気を強めて、逃れる事の出来ない様に詰め寄って来る。母が兄をそれ程怖がっているとは思えないけれど、何だか彼女は直ぐに、兄の機嫌の良くなる様な事をしたがる。     
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