☆1☆ 説得

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悪い評判も多いヤツだったけれど、那波は私にとって特に害はなかった。 アイツが私に話しかけてくる事はなかったし、私がアイツに話す事もない。 休み時間になればさっさと教室から出て行ってしまうし、そのまま帰ってしまう事もあった。 「ヤル気がない」という言葉が、彼にはぴったりハマると思う。 だけど仲間うちでは中心的存在の男。 そんな那波はルックスも目立っていて、一部の女子の間では、かなり人気があるみたいだった。 けれど、私は全然彼には興味がなかった。 縁といえば、席が隣。 そして、帰宅方面が一緒。 カズくんから半ば強制的に渡された地図を見て、私は那波の家を訪ねた。 あまり深く考えずに、とりあえず一度顔を出せば財布をゲットできるだろうと思い、気楽に構えていた。 オートロックではないマンション。 集合住宅という言葉がハマる、世帯数の多そうな建物。 赤茶色いレンガ風の壁を抜けて、階段を上がって2階。 呼び鈴を押しても反応がない。 私は ほっとした。 とにかく来た事に意味がある、と既に達成感を感じつつドアに背を向けかけたその時だ。 「なんだよ………誰?」
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