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悪い評判も多いヤツだったけれど、那波は私にとって特に害はなかった。
アイツが私に話しかけてくる事はなかったし、私がアイツに話す事もない。
休み時間になればさっさと教室から出て行ってしまうし、そのまま帰ってしまう事もあった。
「ヤル気がない」という言葉が、彼にはぴったりハマると思う。
だけど仲間うちでは中心的存在の男。
そんな那波はルックスも目立っていて、一部の女子の間では、かなり人気があるみたいだった。
けれど、私は全然彼には興味がなかった。
縁といえば、席が隣。
そして、帰宅方面が一緒。
カズくんから半ば強制的に渡された地図を見て、私は那波の家を訪ねた。
あまり深く考えずに、とりあえず一度顔を出せば財布をゲットできるだろうと思い、気楽に構えていた。
オートロックではないマンション。
集合住宅という言葉がハマる、世帯数の多そうな建物。
赤茶色いレンガ風の壁を抜けて、階段を上がって2階。
呼び鈴を押しても反応がない。
私は ほっとした。
とにかく来た事に意味がある、と既に達成感を感じつつドアに背を向けかけたその時だ。
「なんだよ………誰?」
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