深夜のファミレス

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深夜のファミレス

 24時間営業のファミレスでバイトを始めた。  時給目当てで、選んだ時間帯は深夜。最初は眠気との戦いだったが、そこさえクリアしてしまえばこの時間帯は客も少なくてかなり楽だ。  深夜の店員は俺ともう一人の先輩だけ。でも二人で充分仕事はこなせる。  お互いなんでもできるしするけど、基本的には俺が厨房、先輩が接客の形が馴染んで、この配置が互いの間では当たり前になっていた。  そんなある夜。  厨房の仕事が片づき、俺はフロアに足を向けた。  いつもなら深夜でも一人か二人は客がいるのに、今日は店内には誰もいない。なのに先輩は空のテーブルにメニューを広げ、何やら説明をしているのだ。 「あの…何してるんですか?」 「何って、今、こちらのお客様に頼まれてメニューの説明を…」  チラと俺を見た後、先輩はすぐにテーブルに向き直った。そこでようやくテーブルが無人なことに気づく。 「え? あれ? 今のお客様は?」 「さっきから見てましたけど、元々誰もいませんでしたよ?」  俺がそう言うと、先輩の顔が見る間に真っ青になった。直後、へなへなと床に崩れ落ちる。  そういえば先輩、前に、オカルトとかまったくダメだって言ってたっけ。そんな人が『見ちゃった』ならこうなるよな。  この後、俺は先輩と持ち場を替わったが、すっかり怯えてしまった先輩にはもう仕事は無理だった。  そして案の定、先輩は翌日バイトを辞めた。  …あれから一年。俺はいまだに深夜の時間帯でファミレスのバイトを続けている。  その間に何人もの後輩ができたが、全員が全員、先輩と同じ理由でバイトを辞めていった。  みんなそんなに霊感があるのか。それとも俺が壊滅的に鈍いのか。  どっちでもいいけど、あんまり頻繁に荒廃が入れ替わると色々教え直すことが多くて面倒なので、なることなら、見えないお客様の来店はお断り願いたい。 深夜のファミレス…完
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