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天才×凡人
王子様は、薔薇の棘が全身から生えるのろいにかかっていました。自分で自分を抱きしめても、傷つくばかり。苦しくて、痛くて、血がたくさん出た王子様は、魔法使いがだしたふわふわの綿毛に包まれて、幸せな気分になりました。【ばらものがたり】
リオンは真っ赤になりながら、目の前の少年を見上げていた。すらりと長い手足に、白衣を纏っている。
「あ、あの、するの?」
「ああ。何か問題が?」
問題はある。ここは学校だし、屋上とはいえ、もし誰かがグラウンドから見上げでもしたら──さらさらと流れる黒髪、緋色の瞳は血のような赤。見つめられているだけで、喉が乾いて、身体が熱くなる。
「家に帰ってからでも……っ」
近づいてきた唇に、リオンはぎゅ、と目を瞑った。彼はためらったりはしない。ダンテの唇が重なった瞬間、くらくらするような、薔薇の匂いがした。
唇が、触れただけで離れていく。真っ赤になってふらふらと頭を揺らすリオンに、ダンテは呆れた声を出した。
「いつになったら慣れるんだ、おまえ」
「慣れま、せん」
彼、ダンテ・ロズウェルとリオンは恋仲ではない。なのになぜ昼間からキスをしているのかというと──それには、深い事情があるのだ。
話はそう、ひと月前にさかのぼる。
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