ズキ×ズキ

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 リオンはそんな声を背に、裏庭で実技の練習をしていた。足元に花を咲かせ、蔓を伸ばして、石を掴む。その石を積み上げる、という地味な練習を、ひたすら繰り返す。教科書に載っている、初歩的な花魔術の練習だ。 「ちょっと」 声をかけられ、振り向くと、ダンテのファンクラブ会長がたっていた。 「あ、紅薔薇の……」 名前を思い出せずにいると、 「三薔薇会のうちの一派、紅薔薇会会長、ローラよ」 彼女はそう言って、じろじろリオンを見た。 「あなた、少し前まで、いつもダンテさまといたでしょう。なぜ急に疎遠に?」 「ダンテにはシルヴィアがいるから」 「あんな女! たった二週間前に転校してきたばかりじゃないの!」 彼女はぎりり、と歯をくいしばる。 「絶対に何かカラクリがあるはずよ……」 「シルヴィア、美人だから。一目惚れだよ」 彼女は地団駄を踏んだ。 「ああああイライラするわね! あなた、ダンテさまを奪われて悔しくないの!? 」 「ダンテは私のものじゃないし」 「ふんっ、そんな風だから奪われるのよ! 見てなさい、紅薔薇会の沽券にかけて、悪しき魔女からダンテさまを奪い返してみせる!」 ローラはそう宣誓し、ずかずかと歩いて行った。 リオンはため息をついて、再び石を積み上げ始めた。 「すごいね。俺の弟は随分と人気者だ」 その声に振り返ると、ルーベンスが窓枠に肘をついて、こちらを見ていた。 「ルーベンス、先生」     
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