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かくいうルーベンスにも、ファンクラブは存在しているのだが。彼は微笑んで、
「こんにちは。振られた気分ってどんな感じ?」
「……振られたわけじゃないです」
「ああ、そう言い聞かせてるんだ」
この人……なんだか楽しそうだ。リオンが黙りこんでいたら、
「拍子抜けしたよ」
「なにが……ですか」
「君はダンテの特別なんだと思ってた。こうもあっさり鞍替えするなんて驚きだ」
「特別なんかじゃ、ありません」
ルーベンスはゆっくり近づいてきて、
「ダンテ・ロズウェルはワガママで、自分のやりたいことしかしない。自分のテリトリーに他人を侵入させたりしないし、ましてや同居なんて、普通なら絶対にしない」
それは、リオンがたんぽぽの魔術花を持っていたからだ。リオンは箒をぎゅっと握りしめ、
「呪いはもう、解けたみたいだから」
「そうだね。薔薇には薔薇──それが正しい在り方だ」
「すいません、私、練習するので」
リオンが蔓を動かし始めたら、すぐ近くで草を踏む音がした。ふっ、とバラの匂いが香る。リオンの隣に立ったルーベンスは、足元に咲いた黄色い薔薇から蔓を伸ばし、積み上げた石を崩した。
「あっ」
「こんな練習に意味はないよ」
「でも、基礎練習は大事です」
「みたところ、基礎練習ばっかりしてるんだろう?」
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