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リオンは図星を突かれてう、と呻いた。彼はリオンから少し離れた場所に立ち、
「実技練習には相手がいなきゃね。俺の薔薇を散らしてみなよ」
リオンは、ルーベンスの黄色い薔薇を見つめた。ダンテほどの大きさではない。だけどロズウェルの薔薇だ。敵うはずもない。固まっているリオンに、ルーベンスが尋ねた。
「他人を攻撃するのは怖い?」
「…… はい」
「ダンテに振られるわけだな。あいつは弱い人間は嫌いだから」
リオンはぎゅっと拳を握りしめ、手のひらをかざした。ルーベンスの薔薇に向かって、蔓が伸びていく。彼はいとも簡単に、薔薇の蔓で、リオンの蔓を払いのけた。しゅるりと伸びてきた薔薇の蔓が、リオンの手首に巻きついた。ルーベンスのところまでぐん、と引き寄せられる。
「っ」
すぐ近くに、ダンテによく似た整った顔立ちがある。
「俺が慰めてあげようか?」
ルーベンスの指が、髪を梳くように動いた。彼はそのまま、リオンの?をするりと撫でる。唇が近づいた、その時──ひゅん、と音が鳴り、飛んできた蔓に、ルーベンスの花が散らされた。
「コラー! 何をしているんだ」
こちらへ駆けてきたアルフレッドが、ばっ、とリオンを庇うように立ちふさがる。
彼はリオンを抱き寄せ、顔を覗きこんだ。
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