こわす×われる

2/7
前へ
/162ページ
次へ
「き、キス」  地味にショックを受けた。リオンのキスで呪いが緩和したのだから、考えてみたら、当たり前の手段なのに。 「でも呪印は消えてるし、ルーベンスはダンテの異変にまるで気づかないし──というより、見てないし」  リオンは、ルーベンスとダンテの冷たいやりとりを思い出した。 「異議を唱えてるのは俺だけだ。おかげですっかり無視されている。まあ、話しかけてもスルーされることは以前からあったがな!」 「は、はあ」  リオンは、アルフレッドだけがはしゃぐロズウェル家の食卓を思い浮かべた。カオスだ……。アルフレッドは、じっとリオンを見つめた。 「なあリオン。ダンテを元に戻してくれないか。あんなのは、俺の弟じゃない」  リオンは首を振った。ダンテが割った金平糖の瓶。思い出すと足が震える。近づいて、また拒絶されたら。そう思うと怖くて仕方なくなるのだ。 「私には、なにもできません。最弱のたんぽぽだから」 「リオン……」  彼は優しい声で言った。 「俺は、たんぽぽとは強い花だと思うぞ。風に綿毛が運ばれて、荒れ地にだって花を咲かせる」  リオンはアルフレッドに頭をさげ、閲覧室を後にした。廊下を歩いていくと、窓から青空が見えた。     
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加