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「き、キス」
地味にショックを受けた。リオンのキスで呪いが緩和したのだから、考えてみたら、当たり前の手段なのに。
「でも呪印は消えてるし、ルーベンスはダンテの異変にまるで気づかないし──というより、見てないし」
リオンは、ルーベンスとダンテの冷たいやりとりを思い出した。
「異議を唱えてるのは俺だけだ。おかげですっかり無視されている。まあ、話しかけてもスルーされることは以前からあったがな!」
「は、はあ」
リオンは、アルフレッドだけがはしゃぐロズウェル家の食卓を思い浮かべた。カオスだ……。アルフレッドは、じっとリオンを見つめた。
「なあリオン。ダンテを元に戻してくれないか。あんなのは、俺の弟じゃない」
リオンは首を振った。ダンテが割った金平糖の瓶。思い出すと足が震える。近づいて、また拒絶されたら。そう思うと怖くて仕方なくなるのだ。
「私には、なにもできません。最弱のたんぽぽだから」
「リオン……」
彼は優しい声で言った。
「俺は、たんぽぽとは強い花だと思うぞ。風に綿毛が運ばれて、荒れ地にだって花を咲かせる」
リオンはアルフレッドに頭をさげ、閲覧室を後にした。廊下を歩いていくと、窓から青空が見えた。
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